Creating and expanding
私たちの生活をより便利で快適にするため、兵庫県立大学で行われている新たな価値創出の取り組みに迫ります。太陽光発電向けの新素材開発から、地域コミュニティを活性化する仕組み、さらには医療工学分野での新薬開発まで、本学は様々なアプローチで社会課題の解決を目指しています。何をどのように生み出しているのか、その創造のプロセスをご覧ください。
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私の所属する研究室では、「ペロブスカイト太陽電池とソーラー?フューエルで人類を救う」という壮大なビジョンを掲げ、持続可能なエネルギー技術の実用化に挑んでいます。現在は、ペロブスカイト太陽電池、水電解水素発生、そして水素燃料電池という3つの主要分野を軸に研究開発を進めています。
まず、ペロブスカイト太陽電池の実用化についてです。従来のシリコン系太陽電池が抱えるコストや製造プロセスの問題を解決するため、低温で製造可能かつリサイクル性に優れたペロブスカイト太陽電池の開発に取り組んでいます。当面の目標は、耐久性20年、大面積30cm角、変換効率15%という電力利益を生み出すこと。誰もが安価に太陽光エネルギーを利用できる社会の実現を目指しています。次に、太陽光を用いた水電解水素発生について。理化学研究所との共同研究により世界トップクラスの超高速水素生成を達成し、クリーンな水素を効率的に製造を可能にしました。さらに、この水素を用いた水素燃料電池では、経済産業省の長期耐久性目標を達成。ドローンなどのモバイル電源への応用も視野に入れています。

実証研究として、これらの技術を統合したSolar-Fuel EVおよびSolar EVの作製も行っています。化学材料、電気工学、機械工学といった複数の分野を横断することで、オリジナルの自然エネルギーEVが作製可能。この三本柱の研究は、単なる技術開発に留まりません。学生と共に謎を解き明かし、目標を達成する過程で、彼らが世界に通用する優秀な人材へと成長していくことが、この研究の最大の意義であり、喜びでもあります。
今後は、これらの成果を社会実装し、クリーンエネルギーの普及を通じて持続可能な社会の構築に貢献することが最大の目標です。研究で得た技術と人材を社会に還元し、未来のエネルギーインフラを創造することで、私たちは技術で世界を変えるヒーローとなるべく、日々邁進しています。
Solar-Fuel EV※1:太陽光を使って生成した燃料(例:水素や合成燃料)を電動車両で利用するタイプのEV(電気自動車)。
Solar EV※2:車両自身に太陽光発電パネルを搭載し、直接電力を得て走行する電気自動車。
拡大する研究
「弱いつながり」がもたらす、強いまちづくり
和田 真理子准教授
国際商経学部所属(研究者情報はこちら)
「弱いつながり」による地域活性化について研究しています。近年、団地やニュータウン、下町では空き家の増加や高齢化の進行により、人間関係が希薄になりつつあります。こうした地域社会の持続可能性を高めるためには、ゆるやかに人と人が関われる「場づくり」が重要です。商店街や移動スーパーなど、買い物や飲食を通じて自然に人が集まる場所には、孤立を防ぎ、住民の心身の健康を支える力があります。いつも同じ顔ぶれが集まる「強いつながり」だけでなく、「つながっても、つながらなくても良い」というゆるやかな関係性の存在により、多様な人々が包み込まれ、地域のレジリエンスと経済の活性化が促されるのです。
私は現在、明舞団地や新長田地区などで地域活動や調査を行い、「弱いつながり」を通じたコミュニティ再生のモデル化と政策提言を目指しています。本研究を通して、誰もが安心して暮らせる包摂的なまちづくりに貢献したいです。


電気の力で目に見えない細胞の世界を読み解く
鈴木 雅登准教授
理学研究科所属(研究者情報はこちら)
私は、微細加工で形成した微小電極を使い、単一細胞を非標識?非破壊で分析する手法を研究開発しています。人間の体内には400種類以上の細胞が存在し、同じ細胞種でも働きには個体差があります。従来の分析法は、染色や破砕を要し、貴重な細胞を損傷させることが課題でした。そこで細胞と同サイズの微小電極を使い細胞の電気的物性値を計測すると、細胞の働きや種類を傷つけずに分析できることを見出しました。具体的には細胞を微弱な交流電場に曝します。すると細胞がゆっくりと回転します。その速さや回り方から、細胞の柔らかさや膜の状態などの“個性”を読み取れます。
本技術は、免疫細胞の抗がん能力や、抗体産生細胞の働きを正確に分析でき、再生医療や細胞治療の発展に寄与できます。現在はスタートアップ企業と連携し、どこでも簡単に使える小型な“次世代細胞センサ”の開発を進めています。医療?創薬?培養肉製造現場に加え、宇宙でのバイオ実験や細胞検査にも応用可能な日本初の革新的細胞分析基盤技術として世界展開します。


注目の人 -Person-
太陽の力をもっと身近に。地球に優しい挑戦
私の研究テーマは、従来のシリコン製よりも簡単かつ安価に作製でき、リサイクルしやすいペロブスカイト太陽電池の開発です。高性能な電池を作製できるよう、材料や構造、製法を調整しています。何度も試行錯誤した先に、自分の工夫が成果として現れた瞬間の喜びは格別です。今後の目標は、資源を有効活用できる太陽電池の実現。再生可能エネルギーの普及を通じて、地球温暖化の抑制やSDGsの達成に貢献できる技術を生み出したいと考えています。
太陽の力をもっと身近に。地球に優しい挑戦
塩木 貴也さん
工学研究科 博士後期課程2年
